鹿児島県 徳之島町立母間小学校
ICTで離島・へき地の教育革新! ~授業・土曜学習・遠隔交流授業での実践~

 鹿児島県の奄美群島に位置する徳之島。徳之島町の小学校3校では、平成27年度より文科省「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」の「離島複式モデル」指定を受け、実証研究を行っています。
 中でも、全校児童33名・複式学級を有する母間小学校では、30台の児童用タブレットPCと電子黒板、TV会議システムを活用し、複式学級の課題解決と日々の授業改善に向けて取り組んでいます。

遠隔交流授業での実践

▲ 遠隔授業で同じ時間に同じ授業が実現

町内の小学校3校をつないで

 母間小学校では、平成27年度よりTV会議システムを活用した遠隔交流授業の実証研究を行っています。
 遠隔交流授業とは、母間小学校を中心に、町内の花徳小学校・山小学校の3校をTV会議システムで繋ぎ、複式学級の授業を合同で行うというものです。
 実証研究2年目となる平成28年度は、 算数・社会・道徳の3教科での実証が行われています。

▲ 動画教材での学習の様子

授業改善の要として、ICTを利活用

 TV会議システムを活用した遠隔交流授業により、複式学級でも単式学級としての授業が実現するため、複式学級の課題である「教員側の学習指導の困難」や、「子どもたちが意見の多様性に触れる機会が少ない」といった課題の解決が期待されています。
 また、子どもたちは、他校の友達との協働学習の中で、「どうしたら相手に自分の考えを正しく伝えられるか」を意識するようになり、発表の仕方も工夫をして取り組むようになってきました。
 遠隔交流授業の中では、先生自作の動画教材や授業支援ソフトの活用に加え、eライブラリのドリルも活用されています。
 タブレットのドリル学習を授業の中で活用することで、子どもたち一人一人が学習内容の定着を図ることができます。

授業での取り組み

▲ 先生がドリル単元を指定しています

喜びの声が響く教室

 2年生の赤崎先生のクラスでは、算数「水のかさ」の単元のまとめにドリルで復習をしました。
 最初は一人一人問題を解き、最後は前方の大型テレビの画面を使って代表者が問題を解いていきました。
 先生から前で問題に挑戦する代表者を募ると、「はい!やりたい!」と全員の手が上がり、全問正解すると「やったー!」と喜びの声が響いていました。

▲ 正解して大喜び!

テスト前のドリルで点数アップ!!

 赤崎先生は単元の内容を定着・補完する役割として、単元テストの前にドリルを活用しています。
 2年生はこの流れをするようになってから、単元テストで平均85~95点の高い点数を取るようになったそうです。
 「今日は『水のかさ』の単位がわかったのかチェックしてみよう」と授業と連動させながら効果的に活用してます。
 授業では問題解決や思考力といった活用の部分を伸ばし、eライブラリで基礎基本の部分を徹底して、相互補完しながら学力を伸ばしています。

インタビュー

eライブラリで、問題を読み解く力をつける

 eライブラリは子どもが自分のペースで学習でき、勉強が苦手な子や抵抗を感じている子も取り組みやすく、集中力を持続させながら楽しく学習することができます。
 問題の中には難しいものありますが、子どもたちはしっかりと問題を読み、文字や絵などの情報から自己解決していきます。それらが問題を読み解く力や情報活用能力にも繋がっていると思います。
 今後は学習履歴を活用し、子どもたちの学力やモチベーションをいかに引き上げていくかが課題です。eライブラリで子どもが基礎からしっかり積み上げて学習し、教師が履歴を分析して、授業だけでは把握することの難しい個々の弱点やつまずきをフォローしていくことが、子どもの将来に繋がっていくと思います。

情報担当
赤崎 公彦 先生

補充学習での取り組み

▲ タブレットでドリル学習を行いました

土曜日の勉強会「学士村塾」

 徳之島町では月に3回、土曜日の午前中に「学士村塾」という補充学習の場を設けています。
 学士村塾は子どもたちの「自学自習」というコンセプトのもと、町役場の職員の方々が中心となり運営しています。
 この日は町の職員の方に加えて、学校の先生方も見守る中、十数名の子どもたちが学校の図書館に集まり、タブレットでドリル学習を行いました。

▲ 筆順の問題にチャレンジ中!

学習履歴でモチベーションアップ!

 学習するドリルの単元は、苦手単元を中心に子どもたちが自分で選んで取り組んでいます。
 子どもたちはドリルを解くとマイページから自分の学習状況を確認し、100点を取るまでリトライしながら問題に挑戦していました。
 マイページでは学習回数や点数に応じてイラストが遷移したり、メダルがもらえるため、子どもたちのモチベーションアップに繋がっています。
 途中休憩を含む計1時間半の学習の間、子どもたちは集中してドリルに取り組んでいました。

▲ 先生画面の前に集まってきます

先生画面で学習状況を確認

 先生は子どもたちの学習状況を学習管理機能からモニタリングしています。
 学習管理機能からは、子どもたちの学習回数やドリルの点数を確認することができ、子どもの頑張りやつまずきを確認することができます。
 先生は、そこから何度もリトライをして100点を取っている子どもを見つけると「えらいね!頑張ってるね」と声掛けをしていました。
 学習管理機能からは学習回数の順位が見られるため、子どもたちは積極的に先生画面を確認しに集まり、「負けないぞ!」と自分の学習に戻っていきます。友達同士の学習回数の競い合いがモチベーションに繋がっているようです。

▲ 写真左から、仲村教頭先生・赤崎先生・学校教育課福永先生

学士村塾の効果

 学士村塾は希望制ですが、参加者が日に日に増え、今では母間小学校全体の半分程まで増えました。「楽しいということが伝わったのだと思います。また、全学年対象なので、下の学年の問題を振り返ったり、子どもたち同士の教え合いも生まれたりしています」と、学士村塾を担当する福永先生。
 この日だけで80教材以上取り組んだ子どももおり、先生から「頑張ったね」とほめられると、嬉しそうな笑顔を見せてくれました。
 仲村教頭先生は、「塾の少ない町内において、学士村塾は学習の機会を得る大切な場です。普段は勉強が苦手な子どもたちも、タブレットのドリル学習はタッチ方式なので楽しみながら学習することができます」とお話しくださいました。
 先生方は、離島という地域の課題を少しでも解消し、子どもたちの将来を応援したいとの思いで、学士村塾に取り組まれています。

インタビュー

ICTを活用した「徳之島モデル」の確立へ

 本校では『離島・僻地・山間部における授業改善』を目的とし、TV会議システムを使った遠隔交流授業やプログラミング授業、そして、学士村塾や授業でのeライブラリの活用などを行っています。人口減少地域ならではの課題を解決するひとつのツールとして、ICTは大きな可能性を持っていると感じています。
 その中で、eライブラリのドリルは、個人の習熟度差に対応できるため、【授業の効率化・教員の負担軽減】に繋がっています。そしてタブレットで使えるようになったことで、PC教室に限らず幅広く使えるようになり、授業の中で子どもたち一人一人に応じた基礎基本の徹底ができるようになりました。また、複式の授業では、ドリルでずらしの時間の空白を埋めることができ、大変効果的です。
 鹿児島県は県土が広いこともあり、複式学級の保有率は全国1位です。そのような環境の中でも、ICTを活用することで、小規模校でも子どもたちの学べるチャンスを広げることができます。
 今後もICTの利活用を行う「徳之島モデル」として研究を進め、離島・僻地・山間部の教育を革新していきたいと思います。

母間小学校校長 福 宏人 先生

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